Zeronicle Story

創作した話や絵を中心に綴るブログ

【怪談】いうこと聞かない悪い子のところに来る者


夜中に迎えに来るもの

「早く寝なさい! 言うこと聞かないと、鬼が来るよ!」

母の声は、いつも寝る前の決まり文句だった。僕は真っ暗な部屋で、布団を頭まで被り、スマホの光でゲームを続けていた。どうせ、鬼なんて来やしない。そんな子供騙し、もう聞き飽きていた。

ガチャリ、とリビングのドアが開く音がした。母がトイレにでも行ったのだろう。その隙に、もう少しだけゲームをしようと、僕は指を動かした。

その時、廊下から、ザッ、ザッ、と何かを引きずるような音が聞こえてきた。心臓がドクリと跳ねる。まさか、母がもう戻ってきたのか? いや、母の足音はもっと軽い。

音はゆっくりと、僕の部屋の前で止まった。そして、ギギギ…と、古びた扉が軋むような音がする。まさか、誰かが部屋に入ってくるのか? 電気をつけようと手を伸ばしたが、怖くて動かせない。

その音は、僕のベッドのすぐそばまで近づいてきた。布団越しの暗闇の中で、何か巨大な影が立っているのが分かった。そして、ツン、と何かが布団を突く感覚。

「まだ起きてるのかい?」

低い、くぐもった声がした。それは、母の声とは全く違う、男のような、それでいてどこか掠れた声だった。そして、その声には、奇妙な金属が擦れるような響きが含まれていた。

僕は震えながら、ゆっくりと布団の隙間から目を凝らした。そこに立っていたのは、僕の知っているどんな人間でもなかった。

それは、闇色のローブを纏った、背の高い影だった。顔はフードで隠され、ほとんど見えない。しかし、そのフードの下から、鈍く光る二本の角が突き出しているのが見えた。そして、ローブの袖口からは、まるで硬い爪のようなものが覗いていて、それが今、僕の布団を突いているのだ。

僕は息を殺した。これが、母が言っていた「鬼」なのか?

「言うことを聞かない子は…連れて行かれるんだよ」

その言葉と同時に、僕の足首に、ひやりとした何かが触れた。それは、まるで氷のように冷たく、固い、異質な手触りだった。僕は全身の血が凍り付くのを感じた。

そして、その冷たい手が、僕の足首を、ギシリ、と掴んだ。