Zeronicle Story

創作した話や絵を中心に綴るブログ

母の愛は次元を超えて

中学一年生の凛にとって、母の愛さんは世界のすべてでした。早くに父を亡くし、二人きりの生活。貧しくとも、食卓にはいつも母の優しい笑顔がありました。しかし、その幸せはあまりにも突然、終わりを告げます。愛さんが、営業の外回り中にくも膜下出血で倒れてしまったのです。愛さんは病院へ救急搬送されましたが、二度と凛の元へ帰ってくることはなかったのです。

身寄りのない凛は、児童養護施設に送られました。しかし、そこは地獄でした。同年代の子供たちからの陰湿ないじめ、そして室長の粘つくような視線と卑劣な接触が、日に日に凛の心を蝕んでいきます。「もう、いっそ死んでしまいたい……。」枕を濡らす夜が続きました。

そんなある晩のこと。夢に、ひどくやつれた母が現れました。生前の快活な姿はなく、青白い顔で凛の髪を撫でながら、かすれた声でこう囁いたのです。

「ごめんね、凛。……でも、もう大丈夫。ママが、あなたを守ってあげるからね。」

その翌日から、凛の周りで奇妙なことが起こり始めました。室長による過去のわいせつ行為が内部告発によって明るみに出て、室長が突然逮捕されたのです。凛をいじめていた主犯格の少年は、階段から転落して大怪我を負い、入院という形で施設を去りました。他の子たちも、次々と不可解な理由で施設を移っていきました。

新しい体制になった施設で、凛はまっすぐに育ちました。ある晴れた日、窓の外を見上げ、亡き母を想います。
「お母さん、ありがとう。ずっと、私を守ってくれてるんだね」

その頬を伝う涙は、温かい感謝の気持ちで溢れていました。
――その一方で、凛に害をなした者たちが、その後どのような末路を辿ったのか、彼女が知ることはもうありません。彼女はただ前を向いて一生懸命生きるだけなのですから。